まさか、自分がアルバイトをする日が来るなんて――。
自営業の私にとって、それは「一生縁のない世界」だと思っていました。
でも、長男アツシの存在が、その考えを大きく変えてくれました。
アツシは、全寮制の中学・高校を経て、大学でも学生寮に入りました。
親元を離れ、自立した生活。第一回の投稿でも書いたように、見た目には「順調」に見えていました。遠くから見ている分には……。
そんな彼が、大学2年の春、友達にすすめられて単発バイトを始めたのです。(※単発バイト=1日だけの仕事。以後「バイト」と書きますね)
すすめられたのは、バイト先ではなく「バイトを探すサイト」。
当時(約10年前)は、まだ「タイミー」は存在せず、彼は「ショットワークス」や「トップスポット」というサイトを使っていました。
私はふと、こう思いました。
「同じサイトで、同じ場所、同じ仕事を、自分も体験してみたら何が見えるだろう?」
軽い気持ちでショットワークスに登録。
……が、現実はそんなに甘くありませんでした。
応募しても、3回連続で不採用。しかも連絡がくるのは、バイトの2日前くらい。年齢がネックだったのかもしれません。
4回目でようやく採用されたのは、アパレル倉庫のピッキング作業。
拘束8時間、実働6.75時間。送迎バスでの「ある発見」は、次回のお楽しみとして取っておきますね。
次にトップスポットに応募してみました。このサイト、応募時に「自己PR欄」があるんです。そこに私は思い切って書きました。「柔道・レスリング有段者、現役です」と。
すぐにお声がかかったのは、時給1,750円・3時間の「デバニング」業務。
でも……知らなかったんです。「デバニング」が何なのか。
「短時間だしラッキー♪」くらいに思っていました。
その“甘さ”の代償は、しっかり体で思い知ることになります(笑)。
これもまた次回に詳しく書きますね。
そんなこんなで奮闘していたある日、テレビCMで見たんです。
橋本環奈さんの笑顔とともに紹介されていた「タイミー」。
「これ、なんか良さそうじゃない?」
そう思って、試しに使ってみたら……世界が一変しました。
3回目からは完全にタイミー派。
今ではもう、迷わず“タイミー一択”です。
もちろん、手放しで絶賛するわけではありません。
でも、タイミーには「障害のある人にとっての、大きな突破口」がありました。
それは——「応募したら即採用(初回は会社側がブロックできない)」という仕組み。ASD(自閉スペクトラム症)、ダウン症、軽度知的障害のある人たちは、面接があるとどうしても落ちやすい。
でも、タイミーなら「まず1回やってみる」ことができるんです。
初回で“問題なし”と判断されれば、その後も普通に働ける。
実際、私も現場でASDやダウン症の方と一緒に働きました。
これは、福祉的就労(時給200円台)の世界から、
時給1,200円の「選択肢」を手に入れる可能性でもあります。
もちろん、誰にでも向いているとは言いません。
実際アツシも、親の期待に応えようと無理をして、生活のバランスを崩しました。
だからこそ、私は自分の目で、耳で、体で、この世界を体験したかった。
「できそうなこと」「無理そうなこと」を、親の視点で、でもできるだけ客観的に、言葉にしていきたい。
それが、誰かの希望やヒントになれば。
私はそれだけで、もう充分です。
