60代でも採用された時給1670円の高時給・単純労働のバイト。その後も誘われ続けたけどどうしても無理だった【3つ目のバイト】

伴走パパブログ

バイトサイトに3連敗して、ちょっと落ち込んでいたある日。「このサイト、自己PR欄あるからオススメだよ」と、長男アツシに言われて、試しに登録してみたのが、単発バイト専門のサイト(SW)。

自己PR欄には、「レスリング・柔道有段者、現役」と記入。65歳という年齢をどう受け止められるか心配だったけれど、すぐにオファーが来た。時給1,670円、3時間限定──「デバニング」というバイト。
…デバニング? 聞いたことない。「でも3時間なら、まあいけるでしょ」って、軽い気持ちで申し込んだ。


静かな倉庫に、男たち5人
JR市川二俣駅から歩くこと25分。
ちょっとした運動になるな、なんて思ってたけど、着いた倉庫の中は、ひんやり静かで、その静けさがどこか緊張感を増していた。

集まったのは、50代くらいの男性3人、30代の若い男性1人(A君)、そして私。A君が普通の布手袋だったのを見て、「この人、この仕事初めてかもな。」と少し親近感。周りのベテランたちと私は、ワークマンで売ってるような本気仕様のゴム手袋をはめていた。

トラックの扉が開いた瞬間──現実を知る
ゴオオ…と音を立てながら、巨大なトラックがバックで倉庫に入ってくる。
後部のドアが開いた瞬間、息をのんだ。

サイズは小さめでも、ぎっしり詰まったゼリーのお菓子はずっしり重くて、
A君が後ろを見に行こうとしたら、運転手さんが「見ない方がいいですよ」と苦笑い。つい私も見に行ってしまって、絶句。想像の3倍長かった。

休憩ゼロ、言葉もほぼゼロ。それでも、止められない
作業はバケツリレー方式。1人がトラック内で段ボールを出し、2番手が受け取り、3番手がコンテナに積む。私は常に2番手で、受け取っては積み続けた。

誰も何も言わない。無言で、ただ流れ作業。それが逆にプレッシャーだった。1時間を超えたあたりから、腕が上がりづらくなってくる。それでも、止められない。
荷室の壁に「あと4m」の目印を見つけて、「まだ4m…?」と、心の中で叫んだ。

ASDに向かない、と思った瞬間
この仕事、やることは本当に単純だ。コミュニケーションも、マルチタスクも、臨機応変な対応も、必要ない。でも、だからこそキツかった。単調すぎる。変化がない。それなのに、身体への負担だけは増していく。

ASDの人は、身体的な疲労が精神面にもダイレクトに影響する。途中から頭がぼんやりして、気づけば動きが機械的になっていた。「この感覚はマズい。」と感じた。無理をしてることに、気づけなくなる。

平均的な仕事の適性で言えば、この仕事は「静かで単純で、会話がいらない」。一見ASD向きに見えるかもしれない。でも、精神力を消耗する構造がある。それが、何より危険だった。

翌日──ではなく、2日後にやってきた落とし穴
作業は2時間で終了。でも、ありがたいことに時給は3時間保証。
終わった瞬間は、「意外と大丈夫だったな」と思った。
でも、本当のダメージは、2日後に来た。朝起きても、全身がだるい。
何もやる気が起きない。階段の上り下りすら億劫で、「これは、ただの筋肉痛じゃない」と思った。

心が重い。気持ちが沈む。言葉が出ない。身体の疲れと一緒に、心もゆっくり削られていた。ASDにとって、こういう遅れてくるダメージは生活リズムや感情コントロールにも影響する。「また行こう」と思えない。むしろ、「またあれが来るかもしれない」という恐怖のほうが残る。
だから、私は「向き・不向き」を考えるようになった。

SWからは、その後もたくさんのお誘いが来た。電話までいただいたのはありがたかったけれど、私はバイトの体験を通して、「多様な現場を知る」ことを目的にしていた。だから、同じような力仕事はもう選ばなかった。

その後は、予定が組みやすく、申し込み=採用の「タイミー」へ移行。
多くの現場を見ながら、
「これはASDのアツシに向くかも」
「これは厳しいな」と、考えるようになった。

最後に──体力だけで測れない働きやすさ
このバイトは、たしかに高時給だった。でも、それと引き換えに失った感情の安定は、大きかった。「向いてない仕事」に、自分を合わせにいってはいけない。これはASDに限らず、多くの人に共通することかもしれない。

そして、ASDの働きやすさは、マルチタスクや会話の量だけでは測れない。
「心をすり減らさずに続けられるか?」それが、ほんとうに大事なんだと思う。

作業に必要な能力
マルチタスク    ★☆☆☆☆(1点) 作業内容は「荷下ろし」のみ。変化なし。
フレキシブル    ★☆☆☆☆(1点) 決められた作業を延々と繰り返す。
コミュニケーション ★☆☆☆☆(1点) 必要最低限。ほぼ会話なし。
感覚過敏への配慮    ★★☆☆☆(2点) 夏は地獄。暑さ対策必須。
体力・精神力           ★★★★★(5点) 体力だけでなく、心も削られる。

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