バイトに応募しても落ちてばかりだったり、やっと入れても、想像以上にハードだったり。体よりも、心の方がすり減っていくのを感じていました。
「このままじゃ、まずいかもしれない」
そんなふうに思って、思いきってタイミーを使ってみることにしました。
最初に選んだのは、宅配物流センターの仕分けバイト。
ネットでもよく見かける、いわゆる定番の仕事です。
時給は1,100円。勤務時間は5時間。
「とりあえず、行ってみよう」──そんな小さな決意と一緒に、現場へ向かいました。
場所は南船橋。JRの駅から倉庫までは徒歩24分。Googleマップで見たときは「ちょっと遠いな」くらいに思っていたけれど、実際に歩いてみると、海風が抜ける埋立地の一本道は、想像以上に長く感じました。
午後3時、集合場所に集まったのは15人ほど。年齢も雰囲気もバラバラで、誰がどんな人なのかは分からないけれど、みんな静かに立っていて、どこか淡々とした空気が流れていました。
その中で、ふと目に留まったのは、二人の若い青年。たぶん、20歳前後。
彼らはずっと、カゴ台車を移動させて、所定の場所にきっちりと収納する作業を繰り返していました。「あのリズム、もしかしたら自閉症かも」とふと思った。
無理なく、ブレることなく、まるで体に染みついたリズムで。
誰かと話すこともなく、笑うわけでもない。
でも、自分のやるべきことを、丁寧に、正確にこなしているその姿が、なぜだかとても印象的で──
派手さはないけれど、美しさがありました。
「働く」って、こういう静かな強さもあるんだな。
そう思ったとき、胸の奥に小さな灯がともったような気がしました。
私が任されたのは「シューター」というポジション。
ベルトコンベアから流れてくる荷物を、大きさや形を見ながら、台車に積み分けていく作業です。
スピードは求められるけれど、慣れてくるとリズムがつかめて、
ちょっとしたパズルのようでもあって、不思議と苦ではありませんでした。
途中、場を仕切っていた50代くらいの男性が声をかけてくれました。
社員さんかと思ったら、なんと常連のバイトさん。
「あなたも副業ですか?」と、自然なトーンで聞かれて少し驚いたけれど、
「ここはアパレル中心の荷物だから軽くてラクなんですよ。だから僕はよく来てます」と笑顔で教えてくれました。
そのひと言に、救われた気がしました。
「こういう働き方もあるんだな」って。
ちょっとだけ、肩の力が抜けた気がしたんです。
女性の姿も思ったより多くて、3人に1人は女性だったと思います。
中には70代の方もいると聞いて、「すごいな…」と心から思いました。
荷物は軽くても、腰を使う作業の連続。
決して楽とは言えない仕事を、黙々とこなしている姿に、自然と頭が下がるような思いでした。
作業が終わって、着替えているときのこと。
数人の女性バイトさんが、ふとしたタイミングで声をかけてくれました。
「また来てくださいね」って。
──たったそれだけの一言なのに、胸の奥がじんとあたたかくなりました。
「今日、自分も誰かの役に立てたんだ」
「ここにいてよかったんだ」
そう思えたのは、久しぶりだった気がします。
この先、いくつか別の現場にも行く予定だけれど、
「もう一度どこかに行くなら?」と聞かれたら、私は迷わず、またこのAセンターを選びます。
時給1,100円。5時間のバイト。
でも、数字では計れない“なにか”を、この場所で確かに受け取った気がしています。
作業に求められる能力
評価項目 星(5点満点)
マルチタスク ★★★☆☆ 流れ作業でスピード感は必要。
フレキシブル ★★☆☆☆ 作業内容はルーティン。変化は少ない。
感覚過敏 ★★☆☆☆ 夏場は暑さがこたえる。冷房は期待できず。
コミュニケーション ★☆☆☆☆ 会話は最小限。基本は黙々と作業。
体力・精神力 ★★☆☆☆ 荷物は軽めだが、腰への負担が地味にくる。
